iCloudプライベートリレーとは、Appleが提供する新しい機能です。
この機能を有効にするべきか、またその効果について説明します。無効化が困難な場合の対処法も併せて解説します。
iCloudプライベートリレーの基本情報:その機能と使い方
iCloudプライベートリレーは、Appleが開発したプライバシー保護機能で、Safariを使用してインターネットを閲覧する際にユーザーのIPアドレスやDNSクエリを隠し、オンライン上の活動を保護します。
このサービスはiCloud+を利用しているユーザーだけがアクセスできます。
動作原理
iCloudプライベートリレーは、端末と訪問先のウェブサイトとの間で、Appleと第三者が運営する2つのサーバーを利用してデータをリレーすることで機能します。
端末からのリクエストは、最初にAppleが運営するイングレスサーバーに送られ、IPアドレスはここで記録されますが、DNSクエリは暗号化されて漏れることはありません。
次に、リクエストはCDN(コンテンツ配信ネットワーク)の一部であるAkamaiやCloudflareが運営するエグレスサーバーに転送されます。
エグレスサーバーで新しいIPアドレスが割り当てられ、目的のウェブサイトに接続する要求が解読されます。
ウェブサイトからの応答も、エグレスサーバーを通じて暗号化され、イングレスサーバーを経由して最終的にユーザーの端末に届けられます。
この一連の流れにより、Appleはユーザーが訪れたウェブサイトの内容を知ることがなく、エグレスサーバーもユーザーのIPアドレスを把握しません。
設定方法
iPhoneやiPadでの設定手順
1. 「設定」アプリを開いてアカウント名をタップします。
2. 「iCloud」を選び、「プライベートリレー」をタップします。
3. 「プライベートリレー」のスイッチをオンにして有効にします。
4. 「IPアドレス位置情報」を開き、「おおよその位置情報」または「国とタイムゾーン」を選択します。
Macでの設定手順
1. macOS Ventura以降ではAppleメニューから「システム設定」を、Montereyでは「システム環境設定」を選びます。
2. アカウント名をクリックして「iCloud」を選択します。
3. Venturaでは「プライベートリレー」を、Montereyではチェックボックスをクリックして有効化します。
4. 「プライベートリレーをオンにする」を選び、IPアドレスの設定を行った後、「完了」をクリックして設定を完了します。
プライベートリレーとVPNの違い
iCloudプライベートリレーはVPNと似たプライバシー保護を提供しますが、適用範囲や機能に違いがあります。
プライベートリレーは主にSafariの閲覧、DNSクエリ、一部のアプリのデータを保護しますが、VPNはデバイス全体の全アプリケーションとサービスのデータを保護します。
VPNでは具体的なサーバー位置を選択することが多いですが、プライベートリレーはおおよその地域や国・タイムゾーンの情報のみを利用して設定されます。
一般にVPNはプライベートリレーよりも強力な暗号化とセキュリティ機能を提供します。
iCloudプライベートリレーのメリット
iCloudプライベートリレーを有効にすることで、Safariでのブラウジングがよりプライベートになります。
この機能はAppleと他社が管理するサーバーを利用して、ユーザーのデバイスからウェブサイトへの通信時にIPアドレスやDNSクエリを隠蔽することにより、プライバシーを向上させます。
プライベートリレー機能がもたらす変化
ユーザーのオンラインアイデンティティであるIPアドレスを変更し、プライバシーを確保します。
これにより、ウェブサイトはユーザーの実際のIPアドレスや地理的な位置を特定できなくなります。
訪問するウェブサイトの情報を含むDNSクエリを暗号化することで、ISPを含む第三者による閲覧履歴の把握を防ぎます。
トラフィックが複数のリレーサーバーを経由することにより、データの送信元と送信先が隠され、オンラインでの活動が追跡されにくくなります。
プライベートリレー有効時の制限事項
IPアドレスを基にアクセスを制限しているサービスやウェブサイトは、プライベートリレーを使用するとアクセスが制限される場合があります。
これには地域限定のサービスや特定の国からのアクセスをブロックしているケースが含まれます。
プライベートリレー機能が有効になっていると、一部のキャリアによるサービスが正常に作動しなくなることがあります。
これにはキャリアのアカウント設定やデータサービスが含まれることがあります。
データが複数のリレーサーバーを経由するため、使用するデータ量が増える可能性があります。
データプランに制限がある場合、この増加に注意が必要です。
データが多くのサーバーを経由することで、通信速度が遅くなることがありますが、顕著な遅延となるわけではないこともあります。
補足情報
プライベートリレーはSafariブラウザに限定されており、他のブラウザやアプリでは使用できません。
また、中国やベラルーシ、コロンビアなど一部の国と地域では、法律によりこの機能を利用することができません。
iCloudプライベートリレーの利用を決める際の考慮事項
iCloudプライベートリレーは、オンラインプライバシーとセキュリティを強化するための機能ですが、この機能を利用するか否かは、メリットとデメリットを理解し、個々の使用状況に応じて検討することが必要です。
プライベートリレーを有効にするメリット
プライバシー保護
ユーザーのIPアドレスがウェブサイトやISPに追跡されることなく、オンライン活動に基づいたプロファイリングの防止が可能です。
公共のWi-Fiを使用している際にもセキュリティを保ち、広告主によるターゲティングやデータ収集から保護します。
セキュリティの向上
通信データを暗号化し、複数のサーバーを通じて送信することで、ハッキングやデータ漏洩のリスクを軽減します。
位置情報の保護
ウェブサイトに対しては、詳細な位置情報ではなく、大まかな位置情報や国・タイムゾーン情報のみを提供することで、地理的な追跡を避けることができます。
操作の容易さ
iCloud+に加入しているユーザーは、設定メニューからプライベートリレーを手軽に有効化でき、特別な技術知識や追加ソフトウェアは不要です。
Appleデバイス間の連携
iOS、iPadOS、macOSといったAppleデバイス間で機能が一貫して動作し、Appleエコシステムを利用するユーザーにとって便利です。
プライベートリレー有効化のデメリット
キャリアサービスとの互換性
プライベートリレーを有効にしていると、ドコモのdアカウントやソフトバンクの動画視聴プランなど、特定のキャリア関連サービスが正常に動作しない場合があります。
このため、アクセス速度が低下したり、制限がかかることもあります。
データ使用量の増加
データが複数のサーバーを通過するため、消費するデータ量が増える可能性があります。特にデータプランに制限のあるユーザーは注意が必要です。
ウェブサイトフィルタリングの効果喪失
プライベートリレーを利用すると、ウェブサイトのフィルタリング機能が働かなくなることがあり、不適切なコンテンツへのアクセスが可能になります。
特に子供が使用するデバイスには注意が必要です。
地域限定サービスのアクセス障害
プライベートリレーを使用すると、IPアドレスに基づく地域判定が影響を受け、地域限定サービスの利用やオンライン取引に不便を感じることがあります。
通信速度の遅れ
データが多くのサーバーを経由するため、場合によっては通信速度が低下することがありますが、その影響は使用環境によって異なります。
iCloud+の加入必須
プライベートリレー機能を利用するにはiCloud+への加入が必要です。
対応ブラウザの限定
現在、プライベートリレーはSafariでのみ使用可能で、ChromeやFirefoxなどの他のブラウザでは対応していません。
プライベートリレーを有効・無効にするタイミング
オンラインでのプライバシーやセキュリティを重んじる場合や、公共のWi-Fiを頻繁に利用する方には、プライベートリレーを常に有効にしておくことをお勧めします。
しかし、特定の通信キャリアや特定のウェブサイトの利用が主であり、データの使用量を節約したい場合には、プライベートリレーを無効にするか、必要なときだけ有効にすると良いでしょう。
さらに、より高いプライバシー保護とセキュリティが必要な場合は、信頼できる有料VPNサービスを利用することも一つの選択肢です。
ただし、無料VPNはセキュリティリスクを伴う可能性があるため、使用には注意が必要です。
最終的には、個々の使用状況やプライバシーに対する考え方に基づいて、適切な判断をすることが重要です。
利点と欠点をよく考慮して、自分に合った設定を選びましょう。
まとめ
iCloudプライベートリレーはAppleが提供するプライバシー保護機能で、Safariの使用時にユーザーのIPアドレスやDNSクエリを隠蔽し、オンライン上の活動を保護します。
この機能は、特に公共Wi-Fiなどセキュリティが心配な環境で有効ですが、利用するにはiCloud+の加入が必要です。
プライベートリレーを有効にすると、一部のウェブサイトやキャリアサービスで制限や不具合が生じる可能性があるため、ユーザーは自分の利用状況に応じてオンまたはオフを選択する必要があります。
また、より高度なセキュリティを求める場合は、信頼できるVPNサービスの利用も検討する価値があります。
プライベートリレーの設定と利用は、ユーザーのプライバシー保護への意識と直接的なニーズに基づいて慎重に行うべきです。